講演1 『静岡県ものづくりイノベーション企業発掘：学生プロジェクトの活用について 』

静岡県立大学国際関係学部講師・産学連携委員 宮崎晋生氏

Keywords：製造業、企業、技術革新、地域プロモーション

静岡県経済では製造業の生産額比率は5 割以上、付加価値比率は4 割を占め、生産品出荷額では全国第4 位を誇ります。このように静岡県は高度成長期以来「産業のデパート」という評価を獲得しております。

リーマンショック後の苦境の一方、製造業企業を個別にみれば、技術力と提案力により業界内で独自の地位を確立する企業、マスカスタマイゼーションをリードする企業、また先んじてIOT を進め日本版Industrie4.0 を指向する企業など、イノベーションをもって世界市場と相対する静岡県企業が存在しています。そこで、昨年度文部科学省知の拠点（COC）プロジェクトにて特徴あるイノベーションを実践する企業を学生が発掘、見学ツアー企画実施とマップの作成を行いました。従来、「見せる」ものとして考えられてこなかった製造業企業イノベーションの現場に、学生の視点から脚光をあてることが出来ました。

さらに、鯖江、東大阪、燕・三条地域、大田区や墨田区など各工業クラスターでその製造現場をアピールする競争も近年加速、観光や各種イベントとも連携しています。ものづくりがまちづくり・人づくりなど含めた地域活性化の重要な役割を担い、さらにこれまでにない新しい知の組み合わせによるオープン・イノベーションも生み出しています。いままで工場の壁やシャッターの向こう側で「見せる」ことのなかったものが、実は地域活性化のカギを握っているかもしれません。

講演2 『健康長寿地域社会の創生 — 産学官連携からオープン・イノベーションへ』

静岡県立大学副学長・産学官連携推進本部長、食品栄養科学部教授 合田敏尚氏

Keywords：地（知）の拠点整備事業（大学COC 事業）、社会活動寿命、健康経営、地域包括ケア

日本人の食事を健康寿命延伸の観点から評価する研究が、盛んに行われるようになってきました。わが国に特徴的な食品の製造、加工、流通のシステムを、静岡県民が先導して開発してきたことに、誇りを持つべきだと思います。東京オリンピックを3 年後に控え、世界中から日本食に関心が寄せられています。安全で質の高い農林水産物とその加工品を、健康長寿ブランドとして、世界に向けて訴求するのは、今が絶好の機会です。このような非競争的な地域事業に、産業界、行政、住民が自由な発想を持ち寄って取り組む「オープン・イノベーション」を、本学は地（知）の拠点として、学術・科学技術の面から支えたいと思います。

少子・超高齢社会であっても、一人ひとりの社会活動の質と量を高める工夫をし、社会的に活動できる人生の期間（社会活動寿命）が自然に延伸する社会であれば、それは持続可能で幸福感に満ちたものです。超高齢社会では、従業員や地域住民の健康は特に重要な資源です。地域住民を主体とする医療・介護等の一体的なケア（地域包括ケア）に地域の「健康経営」の観点で取り組むことは、産業界、行政、住民のすべてに価値を生みます。その恩恵を受けたシニア世代は、76 歳までは「壮年期」として、次の世代に知を継承する役割を担います。そのような超高齢社会のシステムは、世界にむけた究極の健康長寿ブランドとなるでしょう。

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