今回は、静岡大学より下記の内容でご講演いただきます。最先端研究の内容を知ると同時に、研究者との交流も持っていただき、今後の企業活動等に活かしていただければと存じます。多数のご来場をお待ちしております。
静岡大学
講演1. 「脱レアメタルを目指して」
静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 講師 吉田 昌史氏
近年の工業技術の進歩によって、機械構造部品はより過酷な環境の中で用いられるようになっています。これにともない、機械を構成する素材にはより高い性能が求められています。金属などの素材に高付加価値化を行うには、素材に特定元素(希少元素)を添加する方法があります。しかし、近年では希少元素の枯渇が問題となっており、希少資源の代替、使用量の低減などが求められています。このため、できる限り希少元素を使用せず金属に高い付加価値をつける必要があります。 今回は、身近にある金属製品を取り上げて金属の高機能化技術の概略について簡単に説明するとともに、本研究室で行っている金属の高機能化技術の一部について紹介いたします。 <研究の一例:窒素添加による金属の高機能化> 鉄鋼にくらべアルミニウムは軽量であることから、様々な機械部品にアルミニウムの適用が行われています。しかし、鉄鋼と比較すると強度や硬度、特に耐摩耗性に劣ることからアルミニウムの機械構造部品への適用には限界があります。この問題を解決するため、表面に硬質な皮膜を形成させることで硬度および耐摩耗性の向上が図られています。湿式法であるメッキ処理がアルミニウムの表面硬化処理として行われていますが、廃液をともなうことから環境に良くないです。このため、乾式処理によるアルミニウムの新たな表面処理法の開発が必要となります。そこで、本研究室では乾式によるアルミニウムの表面処理法を構築しています。
講演2.「環境にやさしいエネルギーの開発に役立つ熱計測技術」
静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 准教授 十朱 寧氏
近年、社会の要請により、太陽熱発電や風力発電、燃料電池などといった環境にやさしいエネルギー開発の重要性が高まっています。 新しいエネルギーを利用する機器の設計にあたり、省エネ、高効率などの観点から、それらの機器が置かれた熱環境場の温度、流れ、圧力、物質濃度の変化の把握が重要である。 従来は、熱環境場の数箇所に温度センサ、速度計や圧力センサを挿入することによって、「点」としての測定が一般的である。 しかし、数箇所のみの計測だけでは、熱環境場の全容を把握するのは容易ではない。また、センサを測定空間に挿入することで、熱環境場に外乱を与えてしまい、正しい測定ができない恐れがある。 そこで、これらの問題点を克服するため、熱環境場の全容を把握できる計測技術が必要とされる。 本講演では、超音波・赤外線・レーザなどを使用し、熱環境場への外乱を最小限にし、「場」としての温度・速度・圧力などの測定を可能とする先端の熱計測技術を取り上げ、熱環境場に関する新しい測定法を紹介する。さらに、講師が自ら行ってきた超音波CT(コンピュータトモグラフィ)による温度分布測定法の開発についても紹介する。