今回は静岡理工科大学に協力いただき、下記のような内容による講演を企画しました。講演者と交流され、今後の活動に活かしてもらえばと考えます。多数の方の来場をお待ちしております。
静岡理工科大学
講演1 『 ロボットの自律走行を目指して 』
静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 講師 鹿内 佳人氏
昨今のロボットブームにより、私達は報道やイベントを通じてロボットを目にする機会が増えていますが、私達の生活の場でロボットが実用化している例は少ないように思われます。実用化のためには、ロボットが自らの判断で目的地まで移動する「自律移動」を実現する必要があり、そのためにはロボットが走行中に自らの位置を推定できなくてはいけません。既存の研究では、目印となるランドマークを設置して走行時に検知する手法や、GPS を用いて直接自らの位置を知る方法が提案されていますが、ランドマークの設置の手間や電波の受信感度の問題など、生活環境においてクリアすべき課題は多くあります。今回、ロボットが自律移動するための自己位置の推定に着目して、これまでに行ってきた手法について紹介します。いままで研究開発してきた手法の一つで、実用化につながると確信しているものが、あらゆる場所に存在する「磁場」に着目した手法です。磁場を用いたロボットの走行制御としては方位を用いたロボットの走行制御が一般的ですが、方位は建材や配管などの磁性体の影響による誤差が生じるため、長距離を安定して自律走行させることは困難です。この誤差の原因となる残留磁場そのものを磁気のランドマークとして活用するものです。講演では、本手法の詳細について説明するとともに、実際に1 q強の距離を自律走行した公開実験の様子も交えて紹介いたします。
講演2 『 人を補助するロボットと最近の制御動向 』
理工学部 電気電子工学科 教授 高橋 久氏
工場で動いている産業用ロボットは、無人工場を構築するところまで、技術が進んで実用化されています。しかし、人の仕事を補助するサービスロボットは、これから市場が拡大する分野で、その市場規模は、現状の500 億円規模から25 年後には 7 兆円規模に拡大すると予測されています。特に、人が小さな力で操作できる台車や無人で荷物を運ぶ移動用ロボット、無人で農地を耕したり、収穫物を選別して収穫・搬送する農業用ロボット、人の力を補助するロボットスーツやアシスト車いすなどサービスロボットと呼ばれる分野の需要が増加しています。 農業分野では、すでに衛星による全地球測位システム(GPS)を利用した無人の耕作ロボットや収穫ロボットが開発され、実用化に向けた実験が行われています。しかし、果物の収穫は、人が目で見て確認しながら手作業で行うことが多く、大きな 労働負担になっています。果物を見つけ、糖度などを自動計測して、収穫時期になった果物のみを選別して、傷を付けないように収穫し、指定された場所に搬送を行うロボットの開発が望まれています。 今回、今後需要や市場が拡大する農業用ロボットや福祉ロボットをはじめとするサービスロボットについて、これまでに研究室で開発してきた装置やその制御技術、モータやモータを駆動するパワーエレクトロニクスの技術動向、電源の動向など、最近の技術について実例を示しながらわかりやすく紹介いたします。
図3:RTK-GPS を利用した自動走行ロボット
図4:全方向移動アシスト台車