今回は、東海大学に協力いただき、第94回の講演会・交流会を開催いたします。多数の方のご来場をお待ちしております。ぜひこの機会に大学関係者・講演者とご交流いただき、今後の事業活動等にお役立ていただきますようご案内申し上げます。
東海大学
「恵まれた駿河湾活用法、学からの提案」
講演1 『世界遺産の海で海洋スポーツ』
東海大学 海洋学部 海洋フロンティア教育センター 講師 鉄 多加志 氏
Keywords:海洋スポーツ・ダイビング・環境倫理
現在、演者が所属する教育センターで開講している海洋スポーツプログラムにおいては、通常授業でパドリングやセーリングを行い、夏期ならびに冬期集中授業では、サーフィンやダイビングを中心とした海洋スポーツを行っています。授業として、安全に海洋スポーツの行えるエリアは、国内はもとより海外においても、大変に少ない環境といえます。そのような授業プログラムが行えるのも、三保半島を中心に「静岡」の素晴らしい水辺および海洋環境が背景となっているからだと考えます。
昨今、海洋スポーツイベントによる集客は、各地域における観光の一つの柱となっていると考えられます。本講演では、海洋スポーツの紹介とともに、演者の専門分野であるダイビングによって撮影された画像を使って、富士山の構成遺産として登録された三保の海の中を散歩し、その解説を交えながらお話をしてみたいと思います。この講演によって、如何に清水の海の環境が豊かであり、その潜在的なポテンシャルが高いかを伝えられれば幸いです。
【略歴】
1989年多摩美術大学卒業後、水中を専門とするビデオカメラマンとして、テレビ番組やパッケージビデオの撮影や編集を手掛ける。2000年から東海大学海洋学部の非常勤講師として教鞭をとり、放送大学大学院文化情報学プログラムにて学位を取得、2012年より専任講師となる。
講演2 『駿河湾のサクラエビと深海の甲殻類』
東海大学 海洋学部 水産学科 講師 土井 航 氏
Keywords:水産生物学・甲殻類
エビ、カニ、ヤドカリに代表される甲殻類は、日本人にとって食べ物として馴染みのある動物です。食材以外にも、さるかに合戦をはじめ昔話や民謡にも登場し、潮干狩りや水族館での観察は、多くの人にとって共通の経験でしょう。そんな甲殻類には、駿河湾以外の地域ではみられない魅力的な水産資源が数多く存在します。
1つ目はサクラエビです。不漁のため、2013年、2014年には例年5月に由比で行われるサクラエビ祭りが中止になるなど、近年の漁獲量は19世紀末から始まるサクラエビ漁業の歴史において、最も低い値で推移しています。そもそも私たちが食べているサクラエビはどのような動物なのか、駿河湾のどこでどのように生活しているのか、その生物学を紹介します。
演者は現在、サクラエビの繁殖についての研究(成熟や交尾、産卵など)を行なっていますが、本種の漁獲量が低迷している要因について生物海洋学と漁業の面から考えてみたいと思います。
タカアシガニをはじめとする深海生物も、駿河湾の魅力的な甲殻類の1つです。駿河湾では深海の甲殻類は以前から漁獲され、地域的に食用にされてきました。例えば、サクラエビやクルマエビと遠縁にあたる真っ赤な遊泳性のエビや、体長30cmに達する巨大シャコ、タラバガニの仲間であるエゾイバラガニや、ザリガニの仲間であるアカザエビなどです。深海ブームと呼ばれる状況にある現在、様々な種が注目を浴び、地域消費以外の活用方法も考案されています。講演の後半では、そのような駿河湾の深海甲殻類について紹介します。
1979年北海道生まれ。2007年東京海洋大学博士後期課程終了。同大博士研究員、水産総合研究センター国際水産資源研究所(旧遠洋水産研究所)任期付研究員等を経て、2012年より現職。専門は甲殻類の水産生物学。 【所属学会】日本甲殻類学会、日本水産学会など